栃木県の者です。今から10年ほど前になりますが、出産予定日10日前、早朝に自宅で胎盤剥離を起こして大量出血をしました。足元の絨毯が一気に真っ赤に染まり、同時に体から急激に力が抜けて自力で立っていられず、恐怖と寒さで震えながらも、救急車を呼ばず夫の運転で産婦人科の病院に行きました。しかし、その病院では設備が足りず適切な処置が処置できないからと、そこから救急車で大きな病院へ搬送されました。
一気に大量の血を失ったためか、意識朦朧で体の痙攣も止まらぬまま救急車の音だけが聞こえていて、病院到着後は検査もせず直ぐに手術室へ運ばれました。
運ばれている最中、輸血許可のサインを求められたのですが、意識が覚束ず手も痙攣していたので、きちんとサイン出来たかは覚えていません。ただ、夫と駆けつけた両親に「迷惑かけてごめん」と言ったら「こんな時まで何言ってるの」と母親の返事が返ってきたのは覚えています。
手術室内の光景なども記憶になく、女性の声が「もうすぐ楽になるからね。はい、5,4,3……」と言った辺りで意識がなくなりました。気がついたら病院のベッドで、夫のご両親も来てくれていました。
皆に何か言われた気がするのですが。麻酔から覚めた直後は、眠いというより意識が暗闇に引きずり込まれるような感覚で、このまま意識を手放したら死ぬのではないかという恐怖心でいっぱいでどんな会話をしたのか、会話が出来たのかも覚えていません。
落ち着いた後も、しばらくは意識がスーっと暗闇に落ちていくような感覚が抜けず、看護婦さんに本当に意識を落としてもいいのか、と何度か確認してから眠っていました。
後から聞いた話では、お医者様から、夫や両親に母子ともに駄目かもしれない、と言われたそうです。結果としては子供は駄目で私が助かってしまいましたが、亡くなった子供が私を助けてくれたのだろう、と夫が言ってくれました。
眠るのとは違う、闇の底に落ちていくような感覚は、未だに恐ろしくて忘れられません。
(栃木県 女性)