今から40年近く前の事。当時父親が飲食店を経営しており、店内での飲食は勿論、出前も頻繁に行っており近場から遠い所では車で30分以上も走った山奥…なんてところまで出前に行ったりしてました。
普段はバイクで出前に出かける事が多い父ですが、出前先が遠い所だったりすると私を誘い二人で出かける事もしばしば。私も出前に付き合う事は好きな方で「○○さん宅まで行くぞ!」なんて言われたらヤッタァ!って感じで出かけたものでした。
普段出前と言えば夕方が多く夜も20時を回るとほとんどありませんが、その日は珍しく遅い時間。もうそろそろ21時。
電話が鳴ります。「珍しいなこんな遅い時間に出前か?」
父が言います。「はい、いいですよ。これから作ってお届けするので30分くらいかかりますけど・・・」場所は普段から出前の注文が多い近くの病院。敷地内には勤めてる方々の社宅や寮などもあり、どちらかと言うと病院の中と言うより敷地内の社宅であったり寮に出前する感じでした。
父が言います「こんな遅い時間に病院に出前は一人じゃ怖いからついて来い・・・」いいよ・・・と答えます。
敷地内に入り車を降りて暗闇の中を歩き説明を受けた建物へ向かいます。
普段からよく来てる場所で迷うはずはないのですが「あれ?ココは初めて入るな・・・」と父。
「こんばんわ・・・」返事がありません。
「こんばんわ・・・」返事がありません。
ドアに手をかけると開いています。おそるおそる中に入ると薄暗い明かりが所々に灯っています。
少し歩くと左に明かりが見えたので近づくと・・・なんと棺桶が!!
間違えて霊安室に入ってしまったと思いすぐ院内の受付へ。
確認してもらった結果誰も出前の電話はしてない事が判明。
父は少し驚いた様子でしたが「天国に行く前に腹ごしらえをしたかったんだろう!」と笑ってました。
(静岡県 男性)