異なる世界
これは私が小学生の頃の話です。岩手県の小さな漁師町の小学校に私は通っておりました。ある日の下校中の事です。
私の町では町内で火災が発生すると防災サイレンで知らせるのですが、初めに甲子園の様なあのサイレンが2度鳴り、その後に何処でどの様な火災があったかを放送します。その日は下校中にサイレンが鳴り、そのサイレンが嫌いだった私は少し怖い気持ちになり急いで家に帰ろうと早歩きで帰っていました。
その帰宅路は少し変でした。
いつもはお年寄りが道を歩いていたり、公園に人が居るのですが、その日は1人も見当たらなかったのです。それだけならまだしも、風も吹いていなければ、ずっと無音なのです。
本当に怖くなった私は走って家に帰りました。
家にはいつも母と幼い妹がいるので早く家に帰って安心したいと必死に走ってようやく家についたのですが、その日は何故か家にも人がいませんでした。階段を上がり2階へ行っても誰も居ないのです。しかも階段を上がる音もしないのです。本格的に怖くなった私は布団に潜って震えながら泣いていました。
しばらく泣いていると、外からカラスの鳴き声が聞こえました。
鳴き声がしたとたん部屋の中から母の声がしました。「あんたいつからそこにいたの」ととてもビックリした声で話しかけてきました。後で聞くと母はずっと部屋にいたそうで、気づいたら私が布団の中で泣いていたとの事でした。
布団へは母がいる場所を通らなければ行けないので、母に気付かれずに布団へ行くのは不可能です。本当に怖い体験でした。今でもハッキリ覚えています。ちなみにその日以前の出来事を家族や友達と話しても、私だけ知っていて皆知らない事が多々あります。これは私が違う世界からこちら側に来て今も生きていると言う事なのでしょうか。
(岩手県 男性)
大学の帰宅中から起こった異変
私が大学3年の秋頃に経験した不思議な体験のお話です。当時私は石川県の山中にある大学に通っていました。3年生だった私は研究室で実習のデータをまとめるのに夢中になり外が暗くなっていることに気づきませんでした。急いで帰り支度をし、なんとなく寒気というか違和感を感じながらも自転車で山を下っていました。
秋とはいえまだまだ残暑も厳しい頃だったので肌寒さを感じるわけはなくおかしいなと思いながら…。おまけにまだ21時前なのに車にも人にも遭遇しないことにも少し恐怖を感じました。ここまではたまたま人がいない時間なのだろう、寒いのも最近睡眠不足だったから風邪をひいたのだろうと自分に言い聞かせていました。
しかし、坂を下り終えて大通りに出たところで何が起きているのか理解できず少しパニックになってしまいました。
21時に誰もいないことなんてありえない大通りは無人で静まり返り、スーパーも電気はついているのにお客さんも店員さんもいませんでした。しばらくあたりをふらついてから何かの間違いだろうと家に帰ると、家のドアの前に全く知らないおじさんがいました。初めて人に会えたことに安心して近づいていきました。
私の存在に気が付くと「おい!なんでこんなとこに居るんだ!」と怒鳴られ、そこで私の記憶は途切れています。
次に目を開けると21時過ぎでした。どう考えても30分以上は彷徨っていたのにほとんど時間が経っていなかったことにも驚きましたし、家の外で気を失ったのに目が覚めたのは部屋の中。おじさんの正体も分からないままで、顔も思い出せません。
目が覚めてすぐに外に出ると車も人影も何もなかったかのようにそこにありました。一体、夢というにはリアルすぎたあの体験はなんだったのでしょうか。
(石川県 女性)