これは私が大学3年生の夏に体験した出来事だ。私は地域活性化をテーマにしたゼミに所属していて、この夏は研究の為に「八丈島」に訪れることになった。八丈島はかつて日本のハワイと言われていたリゾート地、東京都にある離島である。飛行機で1時間、初めて訪れる八丈島に、私は心を躍らせていた。
昼間は観光スポットを巡り、夜は民宿に泊まり、他のゼミ仲間と共に賑やかな晩餐となった。夕食も済み、各自トランプをしたり人狼ゲームをしたりとまったりとした雰囲気の中、私の親しい友人が言った。「近くに滝があるらしい、行ってみようよ」特にすることもなかったので私はその誘いに乗ることにした。
4,5人で車に乗り込み、友人が行きたい滝というのは『うらみがたき』というらしい。
「恨みが滝?!」と誰かが言い、私も内心驚きながら話を聞いていると、本当の名前は『裏見ヶ滝』。「なんだ〜びっくりした〜」なんて笑いながら話しているうちに到着した。
滝が心霊スポットとして話題になるのはよくあることだ。だからこそ私には少し恐怖心があった。私以外も恐らくそうだろう。生まれてこの方、霊感と呼ばれるものを感じたことがなかった為に、幽霊が居るか居ないかわからない状況の中に足を踏み入れるのに抵抗を感じていた。
「みんなで行けば怖くない!」そう言う友人こそ震えていた。何かにずっと見られているような感覚を初めてそこで体験したからだ。
皆口々に同じことを口にした。居てはいけない気がする、そう同意した瞬間、皆逃げるように車に戻り走り出した。皆何故か無言のままだったが、友人の1人が言った。「気分転換に星を見に行こう」満場一致の賛成。すぐさま逆方向に車を走らせた。
すると滝から数百メートル離れたところで「ウォンウォンゥォン・・・・」車が止まった。
運転している友人がふざけているのかと思い、顔を見ると、真っ青だ。いつもふざけている友人からは想像できない顔つきになっていた。エンジンはつかず、色々試しても全く動かなかった。翌日、地元民に話をしてみると、車が止まった位置に問題があった、暗くてよく見えなかったが細い脇道があったらしい。
その先はかつて八丈島に島流しにあった罪人たちが埋葬してある場所だったと。
罪人たちの憎しみや怒りなどの怨念によるものなのかと地元民は言う。ちなみに乗っていた車は原因不明のまま廃車となったということだった。
(福岡県 女性)