これは、私が看護師になり初めて勤めた老人ホームであった話。その老人ホームは看護師は月に2回当直が有りました。夕方から翌日の8時まで、夜の20時からは事務所隣の当直室で仮眠が取れます。
当直室の反対隣の部屋がケアマネがいる包括支援室になってました。
包括支援室のケアマは3人いて、夕方の18時に帰り翌日の8時半に出勤して来る感じです。
私が当直日に、前日の当直の看護師に「あのさ。包括支援室に朝早くに何かいたんだよね。声してさ。変だよね」と言われました。
私は「そうなんだ」と軽く話を流してました。
そして当直の時間になり、20時から当直室に入りました。
包括支援室が気になりましたが「鍵はかかっていたし、いいや」と思って仮眠を取りました。
朝の6時に起きて当直室から出ると、包括支援室の方から話し声がしてきました。
「キャハハハ」「ヒソヒソ」と笑ったり話す声に、「ケアマネさんかな。しかし6時なのに早いな~」と思って、包括支援室の扉をノックしました。
話し声がピタッと止まりました。
「おはようございます。◯◯です」と声を掛けました。
シーンと静かになり、私は「何か変だ」と思った。
「しつれいしますよ」と私が扉の鍵をマスターキーで開けて中を覗いたら、誰もいませんでした。
怖く寒く感じ扉を閉めようとしました。
「フー何で閉めるの?」と扉の隙間から、知らない女の声がしました。
ボソボソと囁く声でした。
私が驚き扉から手を離そうとしたら、扉の隙間から火傷だらけの真っ白い手が伸びて来て私の手を掴みました。
「おはようございます…」と隙間から火傷だらけの女の顔が見えてニヤリと笑ってました。
白い手を振り払って「助けて助けて。怖い。誰か誰か」と思っていたら後ろから「看護師さん?おはよー」と声がした。
後ろには、入居者の女性がいた。
「大丈夫かい?転んだのかい?」その入居者の女性はいつも朝刊を事務所に取りに来る人でした。
毎朝朝刊を手渡しするので、私は「すいません。あっ!朝刊だよね」と笑って話して事務所に戻るが何故かその入居者の朝刊が見つからない。
「◯◯さん、朝刊あとで届けますね」と振り返って話したら、その女性入居者はいなかったのです。
ちょうど、夜勤明けの職員が通ったので、朝刊の女性入居者について聞きました。
何と、その女性入居者様は3日前に亡くなっていました。
火傷の女、朝刊の女性入居者。
いまだに、その施設に朝になると出るそうです。
(宮城県 女性)