心霊系の怖い話

☆【怖い話・実話】 私を連れて行こうとする女

私が2歳頃、50年くらい前になります。京都の船形が見える集落の旧家を借家として住んでいました。風呂は別棟、トイレも汲み取りの別棟、すぐ裏は竹やぶで、その向こうに古びた墓地があり、溜池があるというような立地だったと記憶しています。

別棟に続く足元は石畳が敷いてあり、お風呂に行くにもトイレに行くにも竹やぶを見ながら、そこを通りました。そして今思い出すとそれがそうだったとはっきりするのですが、その時は日常の景色がありました。

そして竹やぶの奥からいつもボワッと浮かぶ女の人が私を見ているのです。その人からは私を害する気配がなかったのだと思います。だから日常の景色だったのでしょう。

ある日、母に彼女のことを話しました。母は、それはどんな人かと詳しく聞きたがりました。ボワッと浮かんでいて何も話さないで見ていることを話しました。それから母は私を独りで別棟に行くのを嫌がるようになりました。

そんなある日の事、おばあちゃんが迎えに来れなくて(祖父母は風呂のある棟に住んでいました。)独りで行ってしまったのです。夕方で少し雨が降っていました。石畳を歩きながらいつもの様に竹藪の方を見て女の人を探しました。いつも、手を振るのが日課でしたからいつもの様に。

その日、彼女は竹藪から出て石畳に居ました。しかしその日はなぜか彼女を怖く感じたのです。彼女がすすっと目前まで迫ってきました。そして「一緒においで。」と手を引こうと私の手を握ろうとしたのです。

後ろから母が狂ったように走ってくる音が聞こえた時、彼女が消えたのです。

母が泣きながら私を抱いて何か言っているのを記憶しています。その日のうちに裏の墓地のお寺に行きました。お坊さんに頭を撫でられて話をしました。

お坊さんがいうには、女の人は私が可愛くて自分の居る所へ連れて行きたくなったそうです。でも、それはいけないことだから、お坊さんが叱っておくというお話になりました。それから、その場所を取り壊しの日まで独りで歩くことは無くなりました。

旧家と竹藪はもう無くなりましたが、あの墓地も溜池も今も現存します。彼女はまだあそこにいるのでしょうか?

(滋賀県 女性)

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