これは母から聞いた話です。母がまだ幼かった頃なので70年以上昔の話です。
母の母、つまり私の祖母の知り合いが亡くなりました。
その方は大分の田舎に住んでおり、農業で生計を立てていました。その方が所有する土地や田んぼはかなりの量と広さで、とても裕福でお金に困ることのない人生を送っていたそうです。だから、そのお金に目がくらんだ息子さんとそのお嫁さんが首を絞めて殺してしまいました。
その方は誰にも恨まれるような性格ではなかったのですが、息子さんには借金があり、その借金の肩代わりを断ったことを息子さんは恨んでいたようです。
自分がもうすぐ逮捕されるということを知って、警察が来る直前に、その方が大切に育てていた農作物に薬品を撒き、すべての農作物をダメにしてしまったそうです。
これは息子さんの最後の復讐でした。
後日その方の奥様が開いたお別れの会に私の母と祖母が行ったそうで、その道中のその方の田んぼの前で母はその方を見たそうです。
その方は母を自分の娘のように可愛がってくださっていて、母はその方が大好きだったのです。
田んぼの前で、母は祖母に「おじちゃんがいる」と言ったそうなのですが、祖母には何も見えず、結局そのまま通りすぎました。でも、母によるとその方はダメになってしまった農作物を涙を流しながら見ていたようですが、母が自分の横を通り過ぎる時には母を見て、少し笑ってくれたそうです。
母にとってはその方は優しく温かい人でした。
しかし、それから3年後に息子さんが原因不明の車の事故を起こして亡くなったことを聞くと、その方の恨みなのではないかと思ってしまいました。人の恨みや憎しみは怖いです。
(大阪府 女性)