友人Aから聞いた話です。駅から友人Aの家の間に公園があり、そこを通るとかなりの近道になるそうです。ただ、友人Aには見たくないものが見えるそうで、普段はその公園を絶対に通らないようにしているそうです。
ある日、遠方に住む友人と久しぶりに遊んだらしく、帰りが遅くなってしまい、そのため、近道である公園を通ることにしたそうです。
さっさと通り過ぎてしまえば大丈夫だろうと思っての行動だったそうですが、それが甘かったと友人Aは言っていました。
公園に踏み入ってすぐに、嫌な空気を感じたそうです。
遊具が3つほどと砂場しかないような公園は大して広くなく、下を向いて足早に進んでいました。すると、突然手を引っ張られ地面に倒されました。
最初は転んだのかと思ったそうです。でも、体に何かが乗っていることに気づきました。いつも公園に居る幽霊かと思ったそうですが、頬に痛みが走り、殴られたと気付いた瞬間に、自分は幽霊ではなく人間に襲われているのだと理解したそうです。
その時の彼女はパニックで、体をめちゃくちゃに動かした気がするが、全く効果はなかった気がすると言っていました。
ふと、視界の端に人の足が見えたそうです。誰かが通ったのだと友人Aは思いました。
助けてもらえるかもしれない、と思い足から視線を上げると、そこには顔のない女性が立っていたそうです。
友人Aが公園でいつも見る幽霊でした。
幽霊は普段は公園の出入り口近くで、怒った顔をして公園を睨んでいるそうです。いえ、正確には顔は見えないそうです。
墨を塗りつぶしたように真っ黒に、顔だけ影になって見えないそうです。でも、睨んでいることは確かで、それがたいへん恐ろしく思えた友人Aは公園を通るのを止めたのでした。
そんな公園で男に襲われている。万が一でも幽霊が助けてくれないかと期待したそうですが、「ああ、笑ってる」やっぱり顔は見えなかったそうですが、そう感じたそうです。
前に見た怒ったような顔ではなく、襲われている自分を見て、愉快そうに笑っている気がしたそうです。
途端に体が強張り、指さえ動かすことさえできなくなってしまったそうです。
顔をそらしたいのに、動けないから幽霊を見続けるしかなく、もうどうにでもなれ!と自棄になったとき、運よく夜間パトロール中の警官が通りかかりました。
人間と幽霊の怖さを味わい、それでも事なきを得たのが不幸中の幸いだったと友人Aは言ってました。
(神奈川県 女性)