私がラウンジで働いていた時のお話です。お店にはテーブル席が5個とカウンター席が6個ありました。お店が閉店の時間は、女の子同士で世間話や、女子の話で盛り上がることが日常ですが、ふと、一人の女の子が、実はカウンター席の一番左の壁側の席を見て、この席にいつもおじさんが座っていると言い出しました。
そのおじさんはいつもなにか、寂し気で静かに座っているように見えるのだそうです。
お店としては、一番壁側のカウンター席は、満席の時、お一人様のお客さんが座るくらいで普段はあまり使用しないのです。
それから、見えないけれど「そのお席ってなんだか雰囲気が違うよね」と話し出す女の子が増えてきました。
その席は、そのうち誰も近寄ることがなくなっていました。
ある日、団体のお客さんが来て、カウンターには一人で来た男性が例の席に座ることになりました。
私はそのお客様の横に座って話を始めました。第一印象はなんだかとても暗くて、落ちこんでいる様子でした。
飲み屋に一人で来て、こんな暗い顔をしている人は珍しいので「何かあったのですか?」と尋ねると、男性はいろいろと悩みを抱えていて涙を流しながら話し始めました。
いろいろ話を聞いていき、「スッキリしたよ。ありがとう」と男性は帰っていきました。
その後からは、その例のカウンター席に座るお客さんは同じように何故か悩みを抱えていて、帰るころには、元気に帰っていくという「元気の椅子」という名前になりました。
今はもうなくなってしまいましたが、とても不思議な席でした。
今はなくなったのでわかりませんが、女の子に見えていたおじさんが関係しているのでは?とちょっと有名になりました。
(大阪府 女性)