予告する老婆の生霊
救命救急センターで夜勤をしていた頃の話です。
一人でいくつかある治療室の物品チェックや環境整備をするために消灯してある静まりかえったセンター内を一人で歩いていると、ギィ...ギィ...と鈍い音が聞こえました。
不審に思った私はその音がする治療室へ向かいました。
その治療室は重症部屋と呼ばれていて、重症患者を治療するため様々な機器や物品があったり、時にはお亡くなりになられた方を検死するためにも使われる部屋であり、私は医師や誰かがカルテを見るために椅子に座っていてその椅子から音がしているのであろうと思いましたが、一応確認するためにその重症部屋の扉を開けました。
重症部屋は真っ暗でしたが、カルテのパソコンの電源が付いていたため、薄っすらと部屋の全貌が見える程度でした。
「誰かいらっしゃいますか?」と薄暗い部屋へ声かけをしても耳が痛い程の静寂。
気付いたら先程聞こえていた鈍い音は消えていました。
(何だ、気のせいか)と安堵した私はパソコンを再起動するためにパソコンの前に立ち、再起動ボタンを押そうとした瞬間。
ギィ...ギィ...と背後からあの鈍い音が聞こえてきました。
心臓がうるさい程打ち脂汗がドッと噴き上げましたが、不審者だったら危ない!と思い勢いよく振り向きました。
そしたら天井から着物を着て、紐のようなもので首を吊っている老婆がいました。
驚きすぎて腰を抜かしてしまい、老婆を見つめているとその老婆が「あとで...いくから...」と呟いて消えてしまいました。
私は怖くなり当直医に報告し、怖いのでセンター内で一緒にいてくださいと頼み一緒にいてもらいました。
日が昇り始めた頃に救急搬送依頼があり、患者が搬送された時私は言葉を失いました。
「先生、さっき見た人...この人です」
(愛知県 女性)