看護師の友人から聞いた話です。友人は専門学校を卒業してから十年以上看護師をしており、小さい診療所から所謂大病院まで、様々な職場を経験しているベテランです。
そんな友人に年末に飲みに行った時にふざけ半分で「病院で仕事してたら幽霊とか見ないの?」と聞いてみました。
すると友人はあっさりと「あるよ」と答えました。
色々と見たことはあるけれど、一番鮮明に覚えているのはとある大病院に勤めていた時のこと。その職場はとにかく忙しくて、1か月間休みなしで勤務なんてこともざらだったそうです。その日、友人は夜勤に入っており、他の看護師と交代で仮眠室で寝ていたそうです。
さて、友人はその日も激務で疲れており、仮眠室に入るとすぐに眠りに落ちました。ただ、、ナースコールが鳴れば、どれだけ深く眠っていても即座に飛び起きるようになってしまっており、友人は何度も起きては病室に駆け付け、また仮眠室に入っては寝る、ということを繰り返していました。
何度目かのナースコールの時、やはり友人は目を覚まし、疲れながらも仮眠室の扉を開けて病室に向かおうとしました。すると、目の前を、パタパタパタと足が歩いていきました。
裸足の、足だけが。足はそのまま友人の前を通り過ぎていきました。
それを見た友人は、激務で疲れ切っていたせいでしょう。「ああ、足が歩いてるわ」とだけ思い、病室に向かったそうです。
ええ、と思う私に対し、友人は「看護師さんってそんなもんよ、きゃあきゃあ騒ぐのはドラマの中だけ。忙しい時に幽霊になんかかまってられないし、そんなのよりも廊下に血が落ちてたほうがよっぽど怖い」「廊下に血が落ちてたらそりゃ怖いでしょうよ」「いやホラー的な意味じゃなくて、患者さんが勝手に点滴抜いて歩きまわってるかもしれないから」「ああ……」友人は、あまりの激務続きで体を壊しそうになったので、病院をやめてしまい、歩く足についてはなんだったのかはわかりません。
友人曰く「病院なら足を切らなきゃならないことだってあるでしょうよ」とのことですが。
(女性)