高校の修学旅行でのお話です。我々の高校の修学旅行には登山が組み込まれており、登山当日は5時起床のため前日の夜は21時には消灯となります。
私は仲の良いA君とB君との3人部屋でしたが、さすがに高校生が21時に就寝するには早すぎますし、かといって部屋の電気をつけると明かりが廊下にもれすぐに教師に見つかってしまいます。豆球のオレンジの明かりだけを点けて私たちはB君が持っていたトランプで時間を潰すことにしました。詳細なゲームの内容は忘れてしまいましたが、とにかくカードを伏せてポーカー的なものだったと思います。
最初こそ3人の勝敗は拮抗していましたが、途中からA君が異様に勝ち始めました。するとA君がポツリと「カードが透けて見える・・」と言うのです。
トランプ自体はB君のものだし、裏側の柄で判別できるような代物でもなく、まして豆球の薄暗い明かりの中です。しかしA君も全てが見えるわけではなく、スペードとハートの絵札とエースだけ分かると言うのです。伏せたカードを指差しては、これはスペードのエース、これはハートのクイーン、など的確に当てるのです。
さらに時間が経つうちに全ての絵柄の絵札とエースが見えるようになった。さらにスペードは9,10も見える、と見える札が増えていくのです。
そこでB君は全てのカードをシャッフルし適当な一枚をA君の前に出しこれを当ててみろ、と言いました。A君は「スペードの10」と言い、そしてそれはまさにスペードの10でした。
B君はA君の真似をしふざけながら一枚のカードを「ハートの7」と声高らかにめくるとそれはハートの7。必然的に次は私の番ですが、何も見えも感じもしない、適当に「スペードの3」と言いめくるとなんとスペードの3でした。
3人がジョーカー入りのトランプを当てる確率は約7/1百万です。
ざっくり10万回に一回あるかないかですが、この夜の不思議なA君の能力が少し我々にも伝染したような気がしました。この出来事をもって私は特殊能力を持った人間が存在することを信じました。
もうA君とは20年以上会っていませんが人生を透視し幸せに暮らしていることと思います。20年位前の話。
(静岡県 男性)