背中スーの恐怖
私が看護師となったばかりの頃の話です。その病院は歴史があり、建物もとても古く、病室や廊下の壁は所々剥げ落ちている程です。そしてその日は夜勤で、深夜の病室をラウンドしていました。
時間は深夜2時~3時です。ラウンドの最後の病室を出た時に、私は背中の上から下の沿ってスーッと指でなぞられた感覚があり、咄嗟に振り向きました。最初は新人だったので、いたずら好きな先輩のいたずらか患者さんかなと思ったのですが、見回しても誰もいません。気のせいではなくはっきりと指の感覚がありました。
その時は不思議と恐怖は感じませんでしたが、なんとなく先輩には話すことも出来ずに夜勤を終えました。
その後は新人看護師として慌ただしい日々の中、その「背中スー」の事も忘れていました。
しばらく経った夏ごろ、職場の飲み会で「夜勤中の怖い話」の話題になり、私が「背中スー」の話をすると、先輩方は驚かず、冷静に「どこの病室?」と聞いてきたのです。私は冷静な先輩に戸惑いながら「〇〇号室を出た廊下です」と答えると、先輩方は何か含んだような表情になり「あ~〇〇号室…出るよね。」と静かに答えました。
○○号室にそんな謂れがあるなんて知らない私は絶句したのは言うまでもありません。
さらに先輩方の中にも「夜勤中、ラウンドしてて寒気したら〇〇号室だった」や「○○号室の中からドアを見たら、人影が見えた」など様々な体験談があったのです。
先輩方は「新人だから挨拶されたんじゃなの?」と笑ってましたが、私は夜勤の度に挨拶なんてされたらたまったもんじゃないと気落ちしてしまいました。そんな私を見て、さらにベテランの師長さんが「病院だから、いない方がおかしいのよ。本当に怖いのは患者さんの急変や事故なんだから、見守ってくれてると思えばいいのよ」と朗らかに言われ、その時は全然納得できませんでしたが。
その後は病院改築されることになり、その際に私が勤務していた病棟は昔、終末期の結核患者を隔離していた建物だったことを知りました。
結局、「背中スー」はそれ1回きりで、先輩看護師となった今は、新人看護師と夜勤を一緒にする際は、緊張をほぐすネタとして「背中スー」の話をします。
(女性)
夜勤で体験した金縛り
もう何年も昔の話になりますが、私が看護師になりたても頃の話です。
その病院は月に1度、大腸の手術をする患者さんがいて、看護師の当直もだいたい月に1度のペースで回ってきます。以前から幽霊が出ると脅されており、私は幽霊は見えないから大丈夫と、自分に言い聞かせて乗り切ってました。
ちなみに当直は1人です。
そして当直は回ってきました。前の日の当直の先輩に冗談で「昨日は、廊下をゴミを持って引きずって歩いていたよ。たくさん!」とか言われて、やだなぁと思いながら、当直に入りました。
いつものように、決まった時間に見回りをして、患者さんの検温などの仕事をこなし、21時頃に電気を消灯しました。またなんだかその日はいつも以上に怖いなと思いながら一人ナースステーションで夕食を食べながら休憩していました。
その日は重症患者さんもいなかったので、見回り後ドクターへの報告が終われば仮眠できます。深夜1時くらいに眠くなり、ウトウトしていると2時を回っていました。そしてなぜかテレビが砂嵐のようになっており、あれ?なんで、と思い立ち上がろうと思った瞬間、突然金縛りのような感じになり全く体が動かなくなってしまいました。
まさか!どうしよう!、と思っても全く動かないのです。もちろん声もでません。
そのうち仮眠室のカーテンが少し開いている所から、黒い影が飛び回るように出てきて、たくさんの男の人の声が聞こえ始めました。私はもう訳がわからなくなり、気付いた時はもう深夜3時を過ぎた頃でした。
あれは何だったのかわかりませんが、怖かったことだけは間違いありません。しかもそんな体験をしたのはたった1度だけです。
(静岡県 女性)
新人にだけ起こる怪奇現象
看護学校の後、総合病院にインターンへ行った時のことです。2週間の予定で3日目から夜勤があり、最初は夜中の病院が怖く、急にナースコールで呼び出しがかかったらどうしよう…と思っていたのですが、同期と一緒だし、怖い先輩は出勤してなかったので、意外に楽かも…と思い始めていた時です。
夜勤の見回りは、病室までは入らずに、廊下や給湯室を見て回る、警備員のような感じでした。また昔の病院と違い、歩けば自動的に明かりが点くので、懐中電灯も必要ありません。
最初は同期と二人でしていた見回りも慣れてきて一人で行くようになりました。歩いていると、お風呂の電気が点いていることに気付きました。今の時間はお風呂は利用しないので、消し忘れかな、と思い中へ行くと湯気が出ており蒸気が。明らかについさっきまで使用していた形跡があるのです。でも誰にもすれ違わなかったし…と怖くなりナースステーションに戻りました。
先輩に報告すると、一緒に再度見に行くことに。
お風呂は2つあるので、両方確認しても何もありません。
先輩に「何もないじゃん」と言われ、さっきまで床が濡れてたし、蒸気もあったと説明すると、先輩は何か気付いたような顔になり「まぁたまにあるかも」と言いました。
後に聞くと、新人や新任の人がこのような出来事に巻き込まれやすいという話を聞いたので、少しゾッとしました。
(大阪府 女性)
空いた恐怖の病室
私は大学を卒業後、すぐに附属病院の看護師として採用され勤務することになりました。初めの頃は日勤のみで、一通りの仕事を覚えることで精いっぱいで先輩の後について教えて頂いていました。
そして仕事が慣れていくと徐々に夜勤が始まり、その頃には、私が勤務していたのは終末期病棟だったので、何度か看取りも経験していました。そのため、徐々に終期に近い患者様の入る部屋はどこなのかわかるようになってきました。
ある夜勤の日、巡回の時、その部屋は空き部屋でした。にもかかわらず、音が聞こえてきたのです。
確認しに行くと、テレビが点いておりましたが、誰もいません。おまけにテレビは専用のカードを入れないと点かないので、怖くなり先輩を呼びに行き、戻ってみるともう消えていたのです。
先輩いわく、この部屋は夜になると、こうゆうことが起きるそうで、他の部屋では起きないと言っていました。またこの部屋でこのような事が起きるのは前日にこの部屋で患者様が亡くなった翌日の夜だそうです。
(愛知県 女性)
不幸を教えてくれるPHS
看護師1年目の時の出来事になります。私が所属していたのは精神科の認知症病棟でした。
そこでの夜勤は不眠で起きている患者さんや徘徊している患者さんも複数人いて、賑やかであることが多いです。しかし、その日は珍しく、どの患者さんも部屋にいて、ナースステーション内のみ明るく、周囲も静かでした。
平和な夜勤はホッとするもので、23時頃のナースステーションには何人も職員がいました。ちょうど私が巡視に行こうとした時、どこかでピッチが鳴っているのに気がつきました。
ピッチというのは、職員間で連絡を取るための電話の事です。
そして音のする方を辿って行くと、鳴っているのは普段患者さんが使用するソファの後ろに落ちていました。
誰かが落としたのだと思い、番号を見ると、なんと、私が所持していたピッチからの番号だったのです。まさかと思い、自分のピッチを確認してみると、どこにも発信記録はありませんでした。
間違えでそんな誤作動もあるのだろうと、先輩看護師に報告すると、先輩たちは顔を見合わせて、話を始めました。
それは実は去年も同じような事があり、ピッチが鳴って見つかった場所にいつも座っていた患者さんが翌日亡くなったという話でした。まさかと思い、何度も患者の状態を確認し無事朝を迎えることに。しかし、その日の昼に、ピッチが見つかったソファに座っていた患者さんが転倒し骨折してしまいました。
(東京都 女性)
階段の踊り場の心霊体験
以前、私が看護師として働いていた時の話です。現在は離職して他の仕事をしておりますが、当時勤務していた病院で初めての夜勤を迎え、先輩看護師と新人の私と2名体制でした。
その日、初めての夜勤で、先輩看護師と病室を回っている時、先輩が突然「この病院出るの知ってる?」と一言、私は「聞きましたけど、怖いので話を変えましょう」と言いました。
しかし先輩の話は止まらず、「そこの階段の踊り場に出るらしのよ~」と恐怖の絶頂に達した私は、「やめてください」と語尾を強めて言いました。
それからは何事もなかったように業務を続けていたのですが、恐怖はこれからだったのです。
夜中の2時頃、仕事で必要なものを取りに例の階段の踊り場に行かなければなりませんでした。途中、「幽霊なんかいない」と言い聞かせ、無事に物品を手に取り、踊り場から戻ろうとしたその時、妙な気配が上からしたのです。
恐る恐る見上げてみると、天井にぶら下がる老婆がこちらをジッと見ており、私は恐怖のあまり必死に先輩の元へ走り、「見ちゃったか~」と言われ、その日の夜勤はずっと先輩と一緒に行動しました。
その後私はその病院に馴染むことができず退職しました。
(高知県 女性)