あれは2016年の夏休み、家族で日本海の若狭湾に行った時のことです。その日もとても 暑い日でした。お昼すぎに海に到着した頃には海岸にはたくさんの人でごったがえしていて駐車場にも車が全く停められない状況だったので、父が幼い頃に行ったことのある穴場の海岸へ行くことにしました。
行ったことがあるのが数十年前の為場所はなんとなくな感じで車を走らせていましたが無事に海岸を見つけることができました。そこはあの混雑した海岸とは対象的で岩場に囲まれてとても静かな場所でいかにも穴場という感じ、家族も大喜びで荷物を降ろして海岸におりました。
砂浜も海もとてもきれい、最高の海水浴に弟とはしゃいで泳ぎ周り少し休憩すると岩場の向こうに小さな洞穴があるのを見つけました。
洞穴からはひんやりとした風が吹いていて中は真っ暗、弟と二人で中に入ってみることに。
洞穴は中へ行くにしたがったってだんだん大きくなりやがて外の光がギリギリ届くぐらいの場所まで来ました。
怖くなってそろそろ戻ろうかと弟に声をかけると頑なにうつむいて首を横に振っていました。どうしたん?まだ居たいの?と聞いても首を横に降るばかり。やがて弟が小さく震え出しました。
何かおかしい…父と母のとこに戻らなければそう思い入り口を振り返ると、あれ?こんなに入り口狭かったかな?…だいぶ奥まで来すぎたのかな?…後ずさる弟の手を無理矢理引っ張り入り口付近まで帰ってくるとそこに人が立っていました。こちらをじっと見つめる髪の長くてびしょ濡れの女が…恐怖のあまり直視はできない。
でもその女の横を通らなければ外へ出られませんでした。声を押し殺して泣き出した弟を抱え足早に女の横を通り過ぎようとしたその時、〝ちょうだい…〟ゾクっとする声が耳元で囁かれ全力で両親のもとへ走りました。
結局女の言った「ちょうだい」の意味はわかりません。
それ以来この海岸へは一度も行ってません。
(愛知県 女性)